膵癌の診断
(2)超音波診断&FNA

1)昭和大学横浜市北部病院消化器センター
2)山口大学大学院消化器病態内科学
良沢 昭銘1)/Shomei Ryozawa
岩野 博俊1)/Hirotoshi Iwano
工藤 進英1)/Shin-ei Kudo
坂井田 功2)Isao Sakaida
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はじめに

 膵癌診療において,体外式超音波検査(US;ultrasonography)や超音波内視鏡検査(EUS;endoscopic ultrasonography)といった超音波診断およびFNA(fine needle aspiration:穿刺吸引生検法)は拾い上げから確定診断までの各ステップで重要な位置を占めている(図11)。本稿ではそれぞれの診断が実際の臨床でどのように用いられているのかについて概説する。

図1
膵癌診断のアルゴリズム

超音波診断

A. 体外式超音波検査(体外US)

 体外USは簡便で非侵襲的な検査であり,外来診療や検診におけるスクリーニング検査として非常に有用である。通常,膵癌は低エコーあるいは斑状エコーを呈する(図2)。しかし,腫瘍径の小さい膵癌や膵尾側病変は描出することが困難なことも多く検出しにくい。通常の職場検診でのUSによる膵画像の有所見率は約1%で,膵癌発見率は約0.06%以下と低い。膵癌検出につながる間接所見として,主膵管の拡張(2mm以上)や嚢胞が膵癌の前駆所見と考えられ,このような所見がみられた場合は,速やかにCT検査をはじめとする次のステップへ診断を進めるべきである1)。また体外USにおいては,パワードプラ,ティッシュハーモニックイメージ(tissue harmonic imaging;THI)機能,そして経静脈性超音波造影剤Levovist®を用いた造影超音波検査(contrast enhanced-ultrasonography;CEUS)の登場,さらには第2世代超音波造影剤SonazoidTMの開発により,病変の診断能向上が期待される(図3)。

図2
膵癌の体外US 典型像
図3
SonazoidTMによる造影超音波検査で診断された小膵癌

B. 超音波内視鏡検査(EUS)

 EUSによる観察は,内視鏡挿入という侵襲性は有するものの,経消化管的に膵の詳細な観察が可能である。消化管のガスの影響を受けることがほとんどないこともあり,感度86〜100%,特異度58.3〜97%,正診率93%と比較的良好な成績が報告されている1)。近年,電子走査式EUSも実用化され体外USと同様,カラードプラやパワードプラ,THIも使用可能となった。EUSには,観察を目的とするラジアル型(図4),穿刺や治療を主たる目的とするコンベックス(あるいはリニア)型(図5a,b)がある。ラジアル型EUSは描出範囲が360°と広いため,解剖学的理解が容易である。これに対してコンベックス(リニア)型EUSでは描出範囲が狭く解剖学的理解が難しい反面,観察画面がスコープ軸と平行であるため,スコープ先端から出る穿刺針の全体像をリアルタイムに描出することが可能であり,安全で確実な穿刺ができる。

図4
ラジアル型超音波内視鏡
図5
コンベックス型超音波内視鏡とEUS-FNA

FNA

 各種画像診断検査により膵腫瘤の質的診断がつかない症例では,治療方針決定にあたり組織診もしくは細胞診による確定診断が望ましい(図1)。従来はERCP 下膵液細胞診や膵管擦過細胞診が一般的であったが,施設によって成績にばらつきがあり評価は一定していない。一方,US,CT やEUSで得られる画像のガイド下に行われる穿刺吸引生検法は高い診断能と低い合併症発症率が報告されている2)。そのなかでもEUS ガイド下FNA(EUS-FNA) はEUS のもつリアルタイムでの高い病変描出能のため,US やCT でとらえることが困難な病変においても安全で確実な生検が可能である。

 1992年にVilmannら3)によってその手技が報告されて以来,EUSFNAは膵病変に対する有用かつ安全な細胞診・組織診の方法として欧米を中心に普及してきた。わが国でも2010年4月に保険収載されるに至り,日常診療に不可欠な手技となりつつある。

A. 適応と禁忌

 基本的な適応はEUS-FNA が今後の治療方針決定に有用な情報を与える場合である。すなわち,(1)切除不能膵癌で化学療法や放射線療法を行う前のhistological evidenceを得る場合,(2)手術適応を決定するにあたり質的診断が困難である場合,が適応となる。一方,禁忌となるのは,(1)悪性が疑われる膵嚢胞性病変(穿刺により腹膜播種を生じる可能性がある),(2)出血傾向を有する症例,(3)穿刺ルート上に血管が介在する病変などが禁忌である。

B. 手技の実際

 EUS-FNAに用いる超音波内視鏡は上述のようにコンベックス(リニア)型である。穿刺針は,19G,22G,25Gのものが市販されており病変の性状や部位によって使い分ける。EUSのBモード画像で病変を描出して穿刺針を病変内に刺入することにより検体を得る。得られた検体で細胞診や組織診を行うことができる(図5c,d)。手技の詳細な手順やコツについては,他稿4)を参考にしていただきたい。

C. 成績および偶発症

 EUS-FNA の診断能は高く,その正診率は85〜95%,感度は64〜92%と良好な成績が報告されている2)。これらの成績は,ERCP による細胞診やUSガイド下,CTガイド下の穿刺吸引細胞診・組織診などと比べて同等以上の数字である。偶発症については0.5〜2%と報告されており2),その内訳は感染,出血,穿孔,膵炎などである。

D. 今後の展望

 EUS-FNA で得られた検体では通常のH-E染色による組織診に加えて,各種免疫染色による診断も可能である。さらに,得られた微量の検体を用いて,染色体異常や遺伝子異常の解析,抗癌剤感受性試験なども試みられている。今後は,オーダーメイド医療に際して,患者別の情報を得る手段としても期待される。

●文献
1) 日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン改訂委員会編:膵癌診療ガイドライン,2009 年版,金原出版,東京,2009,p44.
2) Ryozawa S, et al : Usefulness of endoscopic ultrasoundguided fine-needle aspiration biopsy for the diagnosis of pancreatic cancer. J Gastroenterol 40 : 907〜11, 2005.
3) Vilmann P, et al : Endoscopic ultrasonography with guided fine needle aspiration biopsy in pancreatic desease. Gastrointest Endosc 38 : 172〜3,1992.
4) 良沢昭銘:超音波内視鏡ガイド下穿刺術(EUS-FNA);私のコツ.消化器画像 9:291〜6,2007.
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巻頭言.膵癌(膵管癌)の現状と将来展望
膵癌の診断・治療の進め方
膵癌の診断 (1)腫瘍マーカー,膵液解析
膵癌の診断 (2)超音波診断& FNA
膵癌の診断 (3)CT,MRI(MRCP),PET(鑑別診断を中心に)
膵癌の外科的治療 (1)膵頭十二指腸切除術
膵癌の外科的治療 (2)膵体尾部切除術(DP)と腹腔動脈合併切除を伴う膵体尾部切除(DP-CAR)
膵癌の術後補助療法
切除不能膵癌の治療 (1)ステント減黄術・内視鏡的十二指腸ステント
切除不能膵癌の治療 (2)膵癌に対するバイパス術
切除不能膵癌の治療 (3)化学療法
切除不能膵癌の治療 (4)放射線療法