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| 巻頭言.腫瘍マーカーの臨床的意義と今後の展望 | |
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- 2012/5/10
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- 2012/4/6
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本来,腫瘍マーカー(tumor marker;TM)とは非侵襲的に採取された生体材料から検出され,癌を完治し得る段階で患者を選別できる特異性と感受性を備えた物質の総称である。すなわちTMは簡便に測定できてスクリーニングに役立つ体液中の物質ということになるが,残念ながら現在のところその概念に合致するものはほとんどない。例外的に前立腺癌の前立腺特異抗原(prostate specific antigen;PSA)はスクリーニングに応用され高い評価が得られているが,どのレベルで生検をすべきか結論は出ていない。したがって,TMはスクリーニングというよりも,経過観察中の再発診断と治療効果判定に主として使われている(表1)。 再発の診断には画像による確定診断が必要であるが,CTやMRIなどの画像診断を頻繁に行うことは,経済性と侵襲性を考えると非現実的である。一方,TMの測定は簡便であり,画像による確定診断よりも早期に異常値を示すことが多い。このように再発診断に用いられるTMは,治療効果判定にもきわめて有用である。近年,固形腫瘍に対する化学療法の進歩は目覚ましく,TMの信頼性は進行・再発癌の治療の鍵を握っている。癌が増殖すれば自ずと体液中のTMは上昇する。すなわち有効な治療が行われなければ癌から産生されるTMは必ず右肩上がりに上昇する。一方,非特異的上昇ならば癌の増殖・進展にかかわらずTMの値は上下に変動する。そして疾患に由来するTM上昇ならば,原疾患の治療によって低下する。したがって,TMを経時的に測定することと,非特異的に上昇する疾患をよく知っておくことがTMを有効に活用するうえで肝要である。 TMは予後因子や治療法選択のツールとしても用いられる。例えば大腸癌のCEAやCA19-9,乳癌のErbB-2などさまざまある。しかし,TMで予後不良と診断されたために治療法を変更して,その結果,予後が改善されたといった報告はない。ただし,乳癌におけるEGFRやHER2の発現は,治療法そのものを規定する。標的分子を広義のTMと解釈すると,乳癌ではTMは明らかな予後因子となる。肺癌は腺癌のCEA,扁平上皮癌のCYFRA21-1,SCC,小細胞癌のPro-GRPと組織型によってTMが異なるが,いずれも早期癌で,陽性率は低い。食道癌は従来SCCが用いられてきたが,臨床的意義はあまり高くはなかった。しかし近年,血中の抗p53抗体の陽性率が高く,治療効果も反映することから注目されている。胃癌も存在診断に有用なマーカーはなく,他の消化器癌と同様にCEAやCA19-9がよく用いられる。またスクリーニングに萎縮性胃炎のマーカーであるペプシノーゲンも重要視されている。最近,中山らによって報告されたα4GnT遺伝子の分子診断は,陽性率が高く注目に値する。大腸癌ではCEAの陽性率は高く頻用されているが,CA19-9も併せてよく用いられる。とくにCA19-9は予後因子としても重要である。しかし,スクリーニングとしては便潜血の臨床的意義を越えるマーカーはない。肝癌はα-fetoprotein(AFP)やPIVKA-IIが一般に用いられているが,最近はAFPのL3分画の特異性が高く鑑別診断に利用されている。胆道癌や膵臓癌はCA19-9の陽性率が高く一般的であるが,炎症や黄疸でも高くなることから特異性に問題がある。SPan-1やNCC-ST-439は特異性の点でCA19-9を補完すると考えられている。卵巣癌のCA125は感度,特異度から有用であるが,存在診断に用いるには至っていない(表2)。 近年,分子生物学的な手法の進歩に伴い,癌関連遺伝子が多数報告されるようになった。とくにDNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現の解析によって,TMの探索が精力的に行われてきた。新たな分子生物学的手法としてDNAメチル化の検出も,癌化の早期に異常をきたすことから大いに期待できる研究分野である。CA19-9に代表される糖鎖性TMはもっとも汎用されている。糖鎖の合成に関与する糖転移酵素の,遺伝子レベルでの解析も長足の進歩を遂げている。したがって,異常糖鎖の発現を促す糖転移酵素群の中から新規のTMが発見されることも期待できる。これらの研究は現在までに膨大な基礎データが集積されてきたが,これからの臨床的評価が待たれるところである。 今後,特異性,感受性ともに優れた遺伝子もしくは遺伝子の組み合わせがみつかる可能性がある。また遺伝子やその産物から癌の高危険群の抽出と予防の可能性も出てくるであろう。 今回の特集では,日常診療で頻用される腫瘍マーカーを中心に紹介しつつ将来を展望する。
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